2018年第2回定例会を終えて(談話)

2018年第2回定例会を終えて(談話)
 

2018年6月27日
都議会生活者ネットワーク  山内 れい子

 本日、第2回定例会が閉会しました。今議会に出された知事提出議案には、交通死亡事故の訴訟案件以外のすべての案件に賛成しました。
●障害者差別解消条例について
  共生社会に向けた条例として、具体的な取り組みが求められています。とりわけ重要な相談体制は、広域支援相談員が電話相談に応じますが、条例の合理的配慮はハードの施設整備や雇用に関するものを対象外としており、さまざまな相談が寄せられたとき、解決に向けた取り組みをどのように提示できるかが課題です。
  条例は、前文と基本理念で「障害のある女性」について取り上げています。障がいと性別による二重の差別を受けることがあり、困難な状況に置かれる場合適切な配慮がなされることを明記しました。実際に性被害やプライバシー侵害などの被害者も多いことから、複合的な差別の解消は切実であり、重要な視点です。障がい女性については、「障害者権利条約」に項目が設けられており、京都府や仙台市の条例にも記述があります。また、条例の基本理念に「年齢等」を入れ、「障害者権利条約」に示された障がいのある子どもへの対応が必要であることを表しました。保育や教育現場での差別をなくし合理的配慮を促すと期待するものです。
  共生社会を実現しようと、各地域で、個々の障がいに応じた配慮と能力を引き出すような職場づくりや、障がいのある子どもたちとともに学ぶ教育現場などの取り組みが模索されており、条例をてこに、障がい者差別を解消する施策を都として積極的に進めるよう求めます。

●受動喫煙防止条例について
 この条例について審議する厚生委員会では、賛成と反対の両方の立場から参考人を招致、意見聴取したことは、議論を深めるために評価するものです。飲食店業界からは反対する意見が多く寄せられていますが、受動喫煙防止対策は世界的な動きであり、事業者に理解を求め、ていねいに進めていくことが必要です。

●人権条例について
  「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念実現のための条例案(仮称)」が9月議会に提案される予定です。それに先立ち、今議会に条例のポイント、条例案概要が提出されました。なかでも「多様な性の理解の増進」は、性的指向および性自認(SOGI)への差別の解消に臨む姿勢が一定程度明確になっていることは評価しますが、条例案概要の策定プロセスにおいて、さまざまな当事者が広く議論に参加しているとは言えず非常に残念です。
  当事者がカミングアウトをしなくても、子ども・教育、雇用、医療、公共サービス等でのいじめやハラスメントなどの未然防止、差別の禁止、困りごとを話し合いで調整する合理的配慮の義務化、支援と相談窓口の設置、差別やハラスメントを受けた人の救済などのしくみを盛り込むことが重要です。条例および基本計画の策定、具体的な運用において、当事者が広く議論に参画し、当事者の意見を反映するよう強く要望しました。

●旅館業法施行条例の一部を改正する条例について
  旅館業法改正により、大きく規制が取り払われました。多様化する宿泊施設への対応として、フロントが必置でなくなることや近隣住民の理解を得ることができるのか、懸念が広がっています。条例では、都独自の規定として、「緊急時における迅速な対応を可能とする体制」を求め、申請時に管理組合の承諾書等の提出を義務づけていますが、安全性を確保することや近隣トラブルの未然防止を求めます。

●「都道上で発生した自転車と自動車の交通死亡事故が道路の管理瑕疵によるものであることを理由とする損害賠償請求事件に関する控訴の提起について」に反対しました。
  自転車走行時に、道路に設置されているグレーチングの形状および材質等や、それと道路との隙間などが危険であることを、都議会生活者ネットワークはかねてから指摘してきました。自転車と歩行者の死亡事故多発を受け、2015年改正された道路交通法によって、自転車の車道走行が促進されたにもかかわらず、道路の幅員や構造はなかなか改善されないまま今日に至っています。せめて不具合な箇所を早く見つけて改善する必要があります。そのためには、市民の力を借りて、見つけた危険箇所の写真をメールで送ってもらうなど、他自治体で実施している方法も検討すべきです。

●子どもの虐待防止に向けて
 今年3月に目黒区で起こった虐待死事件を踏まえ、今議会で防止対策についての議論が相次ぎました。児童相談所の抜本的な体制強化が必要であり、人材確保は急務です。それだけでなく、子どもの命を守るためには、親が孤立し虐待に至るケースが多く、困難を抱えている親と向き合い親も支える取り組みが必要であり、リスクのある妊婦および家庭への支援を求めます。

●生かされなかった40年前の教訓
 40年前の宮城県沖地震での被害の教訓から、ブロック塀の危険性が指摘されていましたが、大阪の地震で小学生が命を落とした報道に、いまだに改善されていなかったことに衝撃を受けました。文部科学省は6月19日全国の自治体に、学校のブロック塀について安全点検するよう通知を出し、都もさっそく調査を開始しています。公立学校のブロック塀を早急に撤去するのは当然ですが、塀の代替として生け垣につくり替えるよう要望します。自治体では、民間のブロック塀の撤去および生け垣の造成に助成金を出しており、緑化推進の観点からも、公共施設の生け垣化を進めるべきと考えます。

 都議会生活者ネットワークは、生活者の視点で、環境・福祉優先の持続可能なまちづくりをすすめていきます。みなさまからのご提案をお待ちしております。